Hirosaki Hairless Rat(HHR)はSprague-Dawley Rat(SDR)から生じたHair keratin遺伝子群の一部が欠失した乏毛を呈するラットである。HHRの表皮は肥厚し、毛包の向きは不揃いで、形はいびつである。Hair keratinはこれまで単なる毛や爪などの構造タンパク質として考えられてきたが、HHRでの毛包の表現型から、Hair keratinは毛包形成において何らかの機能を担っていることが予想される。本研究では毛包形におけるHair keratinの機能解析を試みた。胎生16日、20日、生後1日目、7日目のラット表皮の組織標本を作成し、HE染色したところ、胎生16日か生後1日目では毛包の向きはSDRとHHRで差異は認められず、表皮の肥厚もなかったが、生後7日目になるとHHRの表皮はSDRよりも肥厚し、毛包の形もいびつに変形していることが明らかになった。走査型電子顕微鏡や実体顕微鏡で皮膚表面を観察したが、生後1日目では変化はなかった。各時期の胎児を抗Hair keratin Kb21抗体で免疫染色すると、表皮はわずかに染色されるものの、毛包は染色されなかった。よって、Hair keratinは生後の毛包が発達する時期において発現し始め、表皮や毛包形成に関与していることが示唆された。また、表皮以外にHair keratinが発現している組織は認められなかった。現在、表皮細胞の分化マーカーで免疫染色し、HHRでの分化の異常を基にHair keratinの機能を探っている。今後は、生後1日目ラット表皮からケラチノサイトを分離培養し、DNAマイクロアレイで遺伝子発現の解析を網羅的に解析するとともに、Kb21と相互作用するタンパク質を検索し、その機能を検討する。
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