Hirosaki Hairless Rat(HHR)はSprague-Dawley Rat(SDR)から生じたHair keratin遺伝子群の一部が欠失した乏毛を呈するラットである。HHRの表皮は肥厚し、毛包の向きは不揃いで、形はいびつである。Hair keratinはこれまで単なる毛や爪などの構造タンパク質として考えられてきたが、HHRでの毛包の表現型から、Hair keratinは毛包形成において何らかの機能を担っていることが予想される。本研究では毛包形成におけるHair keratinの機能解析を試みた。本年度は、ラットの皮膚よりRNAを抽出し、エクソンマイクロアレイ解析によって、遺伝子の発現を検討するとともに、スプライシングバリアントの異常を検索した。SDRに対しHHRラットについて、t検定を行い、2群間に有意差のある(ρ値<0.05)遺伝子を抽出したところ、HHRで発現が低下した遺伝子は43、亢進した遺伝子は234検出された。その中でも数種類のKeratin associated protein(KRTAP)の発現が大幅に低下していた。これらのタンパクはHair keratinと相互作用することが考えられており、Hair keratinの欠失によりKRTAPの発現も低下することが毛包の形成に異常をきたす原因であると示唆された。また、マトリックスメタロブテアーゼの発現が大幅に亢進しており、HHRでは毛包が移動しやすい環境下にあることも形態の異常に関与していることが考えられた。以上の結果より、Hair keratinはKRTAPの遺伝子発現に大きく影響を与える可能性が示唆された。しかし、KRTAPに関しては不明な点が多いため、Hair keratinとの直接的な相互作用を解析している。
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