研究概要 |
USP19は近年同定された小胞体脱ユビキチン化酵素であり,小胞体関連分解(ERAD)により分解を受ける膜タンパク質のターンオーバーを調節していることが報告されている。しかしながら,小胞体におけるUSP19の活性調節や細胞機能の分子メカニズムについては明らかにされていない。私は,USP19がHSP90と結合すること,USP19のN末領域が自己プロセシングにより切断されることを見出していたので,これらの特性がUSP19の機能にどのような影響を及ぼすかについて解析を行った。まず,ERADに関与する小胞体ユビキチン化酵素であるTEB4がUSP19の基質であることを明らかにした。TEB4はERAD基質であるが,USP19の脱ユビキチン化によっでTEB4の分解が抑制され,タンパク質発現量が上昇することが分かった。さらにこの脱ユビキチン化はp97/VCPによる細胞質への逆向輸送が起こる前で行われることを示唆する結果を得た。USP19とHSP90との相互作用はUSP19のN末領域に存在するCSドメインを介して行われる。このN末領域を欠失させた場合,TEB4の分解抑制効果が弱まることを認めた。この場合,TEB4の脱ユビキチン化にはほぼ影響がないことが分かった。USP19の自己プロセシングは自身の酵素活性に依存し,CSドメインより少しC末側に位置する保存されたGly-Gly配列を認識して切断することを明らかにした。この認識配列に点変異を導入してプロセシングを抑えたところ,TEB4の分解抑制効果が高まることを認めた。以上の結果から,USP19はTEB4のユビキチン化を負に調節してERADから回避させていることが示された。また,この機能はHSP90との結合や自己プロセシングによって制御されている可能性が示唆された。
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