研究概要 |
USP19は近年同定された小胞体脱ユビキチン化酵素であり,小胞体関連分解(ERAD)により分解を受ける膜タンパク質のターンオーバーを調節していることが報告されている。しかしながら,小胞体におけるUSP19の活性調節や細胞機能の分子メカニズムについては明らかにされていない。前年度の研究により,USP19がERADに関与する小胞体ユビキチン化酵素であるTEB4がUSP19の基質であることを明らかにした。USP19による脱ユビキチン化によりTEB4の分解が抑制され,タンパク質発現量が上昇することが分かった。USP19がERADを調節している可能性が示されたがTEB4以外のERADに関与する小胞体ユビキチン化酵素の発現がUSP19によって調節を受けているかは分かっていない。そこで本研究ではパルスチェイス法により検討したところ,USP19により小胞体ユビキチン化酵素HRD1が脱ユビキチン化酵素活性依存的に安定化することを見出した。他のERADユビキチン化酵素であるGp78でも安定化が認められたがその効果は非常に小さいことが分かった。また,RNF170ではほとんど安定性に影響が見られないという結果が得られた。このことから,USP19は特定のERADユビキチン化酵素のタンパク質分解を負に制御しているはたらきをもつというERADの制御機構の新たなメカニズムの一端を明らかにすることができた。また,USP19の発現により変動する遺伝子を同定するため,USP19を過剰発現させた培養細胞とコントロール細胞を用いてDNAマイクロアレイ解析を行ったところ,シグナル伝達やタンパク質分解に関係する遺伝子の発現に変化があることを認めた。USP19は翻訳後レベル以外にも転写レベルで何らかのタンパク質発現調節を行っている可能性が考えられる。
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