1. MifMによる翻訳アレストの分子機構 MifMによる翻訳の一時停止(アレスト)現象を解析するために、精製された大腸菌由来の翻訳因子と枯草菌リボソームなどを組み合わせて再構成したin vitro翻訳系"Bs PURE system"を開発した。この系を用い、(1)MifMの翻訳アレストは、MifMの翻訳途上鎖とリボソームとの特異的相互作用によって引き起こされることを示した。また、(2)アレストを引き起こす翻訳途上鎖のアミノ酸配列が種によって異なることを見出した。この性質がアレスト因子の配列多様性を生み出している一因であると思われる。一方、生化学的解析から、MifMの翻訳アレストが複数の異なる場所で起こっていることを示唆する結果を得た。既知のアレスト因子とその性質や機構が異なる可能性が浮上した。 2. MifMによる翻訳アレストの解除機構 MifMのC末端にある翻訳アレストモチーフはN末端の膜挿入シグナルによって制御されている。この性質によりMifMは、膜挿入をモニターするが、この膜挿入シグナルを分泌シグナルに入れ替えることで、膜挿入モニターから分泌モニターへとその性質を変化させることを見出した。このことは、C末端の翻訳アレストモチーフが部品性を有していることを示しており、アレストモチーフとN末端のセンサーモチーフとの組み合わせによって多様なモニター因子がデザイン可能である事が明らかとなった。この部品性は、翻訳アレストを利用した多用なセンサーが生じるメカニズムの1つと考えられ、また、他の生物学経路をモニターする未知の因子が存在する可能性を示唆している。
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