糖鎖は、細胞膜上の多数のタンパク質や脂質と協調的に働くことで、適切なシグナル伝達の場を提供していると考えられる。本研究では、以下三点に注目し、細胞接着活性の認められる糖鎖欠損変異体を用いて、インテグリンに付加された糖鎖機能の全貌を明らかにする。(1)インテグリンを中心とした複合体の形成に糖鎖はどのように関与しているか。(2)インテグリン上に付加された糖鎖を介した複合体形成の特異性。(3)糖鎖を介した複合体の形成は、インテグリンの増殖・分化シグナルにどのような影響を与えるか。 22年度においては研究代表書らが開発したEMARS法を用いてインテグリンの糖鎖変異体の周りにはCD44、膜貫通型フォスファターゼなどの特異的な分子が存在していることが示唆された。一方で、糖鎖変異体において細胞膜の流動性が変化していることがFRAPや超遠心分画から分かった。さらに、GOLPH3のノックダウン細胞においてインテグリンに付加されたN-結合型糖鎖上のシアル酸の減少により、インテグリンを介した浸潤活性および細胞接着活性が低下することが強く示唆された。さらに詳細に糖鎖構造を解析するため現在、HPLCを用いて糖鎖構造を解析中である。以上三点の基礎的な解析結果についてこれらの意義について、本年度も更に解析を行う。
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