研究概要 |
本研究では、ハブ血清由来の抗毒素蛋白質SSPのCa^<2+>チャンネル結合性神経毒Triflinとアポトーシス誘導蛋白質Hv1に対する生理的阻害能、および相互作用部位を調べることが目的である。申請書に記載した「研究実施計画」に沿って平成23年度の研究結果を以下に示す。 1.抗毒素蛋白質SSPとハブ毒素蛋白質(Hv1,Triflin)の相互作用解析 (1)BlAcoreを用いた結合解析より、SSP-1,SSP-4は、ハブ血清中に存在する抗出血因子HSFと複合体を形成後、さらにHv1と三者複合体を形成した。また、SSP-2/HSF/Triflinの三者複合体形成も確認した。この結果より、SSPは、ハブ血清蛋白質とハブ毒蛋白質に対してそれぞれ異なる相互作用部位を持つことが示唆された。 (2)SSP-1変異体解析より、SSP-1分子表面のループ上に位置するV^<29>,F^<44>は、Hv1および、HSFの結合には関与しないことがわかった。一方、βシート上に位置するW^<33>は、HSFの結合に重要であることが示唆された。 2.Hv1のアポトーシス誘導活性に対するSSP/HSF複合体の影響 SSP-1(またはSSP-4)は、HSFとの複合体の形でHv1のペプチダーゼ活性を非拮抗的に阻害した(SSP-1/HSF:ki=8.7×10^<-9>M,SSP-4/HSF:ki=5.8×10^<-7>M)。また、SSP/HSF複合体は、Hv1(50nM)が誘導するヒト膀帯血管内被細胞(HUVEC)の核の断片化やカスパーゼ3の活性化を等モルでほぼ完全に抑制した。 3.NMR化学シフト法による相互作用部位の同定 (1)無細胞蛋白質合成系より、SSP-2と結合能力を保持している^<13>C,^<15>N標識Triflinの大量調整に成功した(計3.89mg)。 (2)Triflinの主鎖シグナルの帰属を行った。また、天然SSP-2を用いた滴下実験より等量のSSP-2存在下ですべてのTriflinが強固に結合している様子が観測された(k_D=0.12nM)。 (3)化学シフト解析を行った結果、SSP-2の添加でTriflinのシグナル強度が消失または、減少した残基は、TriflinのPR-1ドメインのβ4を中心とした領域(65~80残基の領域)に集まっていた。一方、C末端側ドメインに存在する残基は、ほとんどシグナル強度に変化がなかった(186~221残基の領域)。
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