研究課題
蛋白質において定まった立体構造を形成しないフラフラとした領域(Unstructured領域)が近年注目されているが、その詳細な役割はまだわかっていない。ところが最近、Unstructured領域と蛋白質分解装置プロテアソームとの密接な関係が示唆されている。特にプロテアソームによる基質認識にはポリユビキチン鎖に加えて、Unstructured領域が必要であることが明らかにされている。このUnstructured領域は神経変性疾患におけるプロテアソーム阻害にも関わっていると予測される。神経変性疾患を引き起こす凝集性蛋白質などのミスフォールド蛋白質はUnstructured領域を持っている。そこで私は凝集性蛋白質のUnstructured領域がプロテアソームに作用し、分解活性を阻害すると考えた。そこで凝集性蛋白質によるプロテアソームの阻害を見積もるために、ポリグルタミンが異常伸長したハンチンチンエクソンI(htt)領域と、酵母由来のプロテアソームを精製し、両者の関係を調べるin vitroの実験を行った。この実験よりプロテアソームの凝集体抑制効果とhttによるプロテアソームの阻害効果は、他の蛋白質と同様、httがユビキチン化されているときにのみ効率的に起こることがわかった。これは古典的な競合阻害で説明できる。しかしながらユビキチン非存在下でもプロテアソームはhttの限定分解をして、性質の異なる凝集体形成を促進することを明らかにした。また高濃度のHttはプロテアソームのサブユニットの解離を誘起することがわかった。in vitroで観測されたこのような相互作用が、in vivoにおけるHttによるプロテアソーム阻害につながると考えられる。今後Httの限定分解やプロテアソームの解離が細胞内でどのような意味を持つのか実験的に検証する必要がある。
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生物物理
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10.1016/j.jmb.2011.05.018