熱帯熱マラリアに対するワクチンとして開発されているSE36は、120kDaからなるSERA5と呼ばれるタンパク質のN末端ドメインに由来する。SERA5については、どのような機能や立体構造を有するのかなど不明な点が多く残されており、本研究ではSERA5、特にSE36に相当する領域についての物理化学的性質や高次構造情報を明らかにすることで、SE36ワクチンの品質の管理と評価、また効率的なワクチンの生産と改良に繋がる基盤を築くことを目的としている。今年度は、SERA5を構成するドメインのうち、SE36に相当する47kDaドメインと、47kDaドメインとジスルフィド結合で繋がっている18kDaドメインに重点をおき、酵母および大腸菌を用いて、その領域の組換えタンパク質の発現を試みた。酵母における発現系では、さまざまな配列や組合せを試したにもかかわらず、目的タンパク質の発現は確認できなかった。一方、大腸菌では、封入体になってしまうものの、47kDaドメインや47、18kDaを繋いだコンストラクトの発現が確認された。それらの封入体からのリフォールディングを行った結果、単量体として存在するものが得られたが、円二色性(CD)や示差走査熱量計(DSC)により測定したところ、有意な二次構造が存在するものの、協同的な熱変性を示さず、有意な三次構造が形成されていないことが示唆された。しかし、47kDaドメインから低複雑度領域を除いたコンストラクトのうち、C末端領域が短くなったものについては封入体にならず、また精製中の性状が非常によかったため、^<15>N標識体を発現させたところ、核磁気共鳴(NMR)で有意な立体構造をもつと思われるスペクトルが得られ、またCD、DSCにおいても協同的な熱変性を示した。 来年度は、このコンストラクトをベースに、詳細な構造解析を行うことを目指そうと考えている。
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