研究課題/領域番号 |
22770151
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 正典 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (60452463)
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キーワード | マラリア / ワクチン / 構造物性 / SE36 |
研究概要 |
熱帯熱マラリアに対するワクチン候補として、現在、ウガンダで臨床試験が行われているSE36は、120kDaからなるSERA5と呼ばれるタンパク質のN末端ドメインに由来する。本研究ではSERA5、特にSE36に相当する領域についての物理化学的性質や高次構造情報を明らかにすることで、SE36ワクチンの品質の管理と評価、また効率的なワクチンの生産と改良に繋がる基盤を築くことを目的としている。昨年度までの研究において、構造物性解析に適した高純度、高品質のタンパク質を得るための条件検討および物性測定を繰り返してきた。その結果、SE36およびその由来となったSERA5タンパク質の発現、精製における、発現領域、発現系、精製方法の好ましい組み合わせが明らかになってきた。しかし、必ず発現、精製がうまくいき、再現性が高い状態であるかと言うと、特に、安定同位体標識を行うための合成培地における発現においては、まだ満足のいくレベルとは言えないのが現状である。具体的には、熱帯熱マラリア原虫においても株によってバリエーションの多い低複雑度領域を除いたSE36コンストラクトを大腸菌で発現させ、そのC末端領域が大腸菌内で切断されたものの性状が良好であったため、C末端が同じものだけが確実に得られるように、あらかじめ切断が予想される付近にストップコドンを導入した新しいコンストラクトを作製したが、繰り返しさまざまな条件での発現、精製を試したものの、良好なNMRスペクトルが得られるには至らなかった。精製タンパク質の濃度や純度は吸光度や電気泳動で確認しているので、NMRで観測できない会合体を形成している可能性が考えられる。そこに至るまでの過程で、その都度、物理化学的解析手法によって、その構造物性を解析しており、SE36のもつ性状についての理解は確実に深まってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の結果に基づいて、よりうまくいくと思われた方向性で新たなコンストラクトを作製し、その発現、精製を試みていたが、繰り返し条件検討を行った結果、吸光度や電気泳動では判断できないレベルで、構造解析に適した純度を達成することが困難なことが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、引き続き、立体構造解析に耐えうる高純度、高品質のタンパク質を得るためのさらなる条件検討を行いつつ、これまでに得られた各コンストラクトの構造物性の情報をもとに、その方向性を発展させたいと考えている。具体的には、超遠心分析による自己会合状態や、分光器や熱量計を用いた熱力学的安定性の解析など、多角的かつ詳細な構造物性解析を積み重ね、直接的な立体構造解析が困難な場合には、SE36およびSERA5の構造物性についての研究として成果をまとめたいと考えている。
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