本研究の目的はプリオン仮説に基づく一連のプリオン病に関して、蛋白質の励起構造を通じて感染機構の構造基盤及び異なる動物種間の構造特異性を解析することである。これまで NMR測定のための十分な蛋白質発現が見込まれないとされてきた全長(アミノ酸番号 23-231)のハムスタープリオン蛋白質に関して、 15N安定同位体標識を施した大量発現プロトコルを確立させた。高圧下で安定化される励起構造の定量解析を目指した横緩和分散測定では、解析に足る十分な緩和分散プロファイルが得られず、その後も測定条件の最適化を図ったが改善されなかった。このことから、 haPrPCの基底構造と励起構造の間の揺らぎが横緩和測定の検出範囲であるミリ秒オーダーから外れた時間域で生じている可能性が示唆された。
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