本研究は活性化クロマチン構造の分子制御機構の理解を目的とし、新規因子の探索を基盤とする。構築したショウジョウバエ分子遺伝学的スクリーニングを継続し、クロマチン構造変換因子の候補としてパフに局在化する因子群の探索を実施した。この結果、全1484系統のスクリーニングを完了し、14系統の候補因子系統の取得に成功した。取得された候補因子のなかには、Zinc-fingerモチーフやPHD-fingerモチーフを持つタンパク質グループやRMMといったRNA結合モチーフを有するタンパク質が見出された。続く2次スクリーニングではエクダイソンレセプター(EcR)の転写活性化に寄与する因子の選別を目的とし、候補因子のノックダウン系統とin vivoレポーターショウジョウバエを用いたEcR標的遺伝子の転写活性解析を行った。なかでも、Zinc-fingerモチーフとRing-fingerモチーフを有するCG11138(Ringfectと命名)はその発現量依存的にEcRのリガンド依存的な転写活性を促進した。したがって、Ringfectを中心的に更なる性状解析を行った。まずはRingfectの転写活性化ドメインを検索するためにそれぞれのドメインの欠失変異体と点変異体を作成した。S2細胞においてレポーターアッセイを行った結果、Ring-fingerモチーフ変異体はEcRの転写促進を抑制した。このことから、RingfectのEcR転写活性化能はRING-fingerモチーフを介していることが示唆された。更にRingfectがEcRの標的遺伝子E75Bの発現を促進するかを検討するために、Ringfectをノックダウンし、RT-qPCRを行った。その結果、E75B mRNAの発現量が減少したことから、RingfectはEcRの転写活性化に寄与することが明らかとなった。
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