本研究はクロマチン構造の活性化制御メカニズムの理解を目標とし、分子遺伝学的スクリーニングからの新規因子探索を基盤としている。特に、クロマチン構造のモデル系としてショウジョウバエ三齢幼虫の唾腺多糸染色体を利用した新たなクロマチン構造調節因子の探索を目指している。構築した分子遺伝学的スクリーニングから、クロマチン構造変換候補因子として唾腺多糸染色体エクダイソンパフ領域に局在化する因子として、Zinc-fingerモチーフとRing-fingerモチーフを有するCG11138(Ringfectと命名)を同定した。RingfectはEcRのリガンド依存的な転写活性を、p160ファミリータンパク質Taimanと協調的に促進し、この転写活性化能はRingfectのRING-fingerモチーフを介して発揮されることが明らかとなった。また、ショウジョウバエ培養細胞においてRingfectをノックダウンし、EcR標的遺伝子E75Bの発現誘導をRT-qPCRによって検討を行ったところ、E75B mRNAの発現量が減少したことから、RingfectはEcRの転写活性化因子であることが判明した。更なるスクリーニングの結果、Ringfectに加えて、新たにDrosophila Enolaseがパフに局在化することを見出した。抗Enolase抗体による多糸染色体の免疫染色の結果、解糖系酵素の1種であるEnolaseが核内において転写反応に関与する可能性が認められた。
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