研究課題
微生物(細菌)は、その種ごとに自己のゲノムを規定する短いDNA配列を持っている。大腸菌の場合には、5'-GCTGGTGG-3'の配列がそれにあたり、ゲノム上に高頻度に存在している。この配列は、RecBCD酵素と呼ばれるDNA分解酵素によって認識され、この配列のあるDNAに傷がある時は「自己ゲノム」して修復される。RecBCD酵素が、この配列を認識してその機能を「DNAの分解」から「DNAの修復」にスイッチすることは知られていたが、どのようにしてこの切り替えが起こるのかは不明であった。そこで私は、このRecBCD酵素の結晶構造からDNAと相互作用しそうなアミノ酸を予測し、40余りのアミノ酸を一つずつ置換した突然変異酵素遺伝子を作成して遺伝学的な解析からそのメカニズムに迫った(論文準備中)。表現型の現れたすべての変異酵素を精製して、生化学的な特徴を解析した(論文準備中)。大腸菌がゲノムにコードするDNA切断酵素の一つにIV型の制限酵素がある。この酵素はメチル化された特定のDNA塩基配列を認識してDNAを切断するとされる。私たちは以前、I型制限酵素が認識配列と相互作用した後で、DNAをたぐり、複製フォークで切断することを報告したが、このIV型制限酵素にも同様の活性があることを、in vivo、in vitroの両アッセイ系で実験的に証明した(Nucleic Acids Res印刷中)。このことは、これらの酵素が正常なDNA複製をモニターし、異常があれば複製フォークを切断して、ゲノムあるいは細胞の生死をコントロールする事を示唆する。また、大量のシークエンスデータが蓄積している中で、ピロリ菌アジア株(4株)のゲノム比較解析から、「遺伝子一重複を伴う遺伝子の新生と喪失」の例を複数見つけて報告した(Proc Natl Acad Sci USA 2011)。
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Proc Natl Acad Sci USA
巻: 108 ページ: 1501-1506
Nucleic Acids Res
巻: (印刷中)(掲載確定)