1)NA修復因子の転写反応における機能解析については、前年度までの解析によって(i)XPGをノックダウンした細胞では上皮増殖因子(EGF)で刺激した後のc-fos遺伝子の発現誘導が抑制されること、(ii)正常細胞においてはこの刺激依存的にXPGがc-fos遺伝子座にリクルートされること、(iii)野生型XPGと患者細胞にみられる変異型XPGではこのリクルートに差が見られること、を明らかにしている。そこで本年度はXPGがより広範な転写反応に関与する可能性を検討するために、c-fos遺伝子座以外のXPGの局在の検討と、XPGと物理的に相互作用する因子の探索を試みた。具体的には前者では、これまでの報告からRNAポリメラーゼIIによって転写が活発に行われているEEFlAl遺伝子座におけるXPGの局在を検討した。その結果、c-fos遺伝子座で観察したときと同様に、XPGはEEFlAl遺伝子座においてもリクルートされていることが分かった。後者では、GFP及びV5タグを付加したXPGタンパク質を発現する293細胞を用い、この細胞抽出液をGFPまたはV5抗体で免疫沈降を行った。この実験ではより弱い若しくは一時的な相互作用を検出するためにクロスリンカーを用いた。その結果、XPGがこれまでに相互作用の報告のあるTFIIHに加えて、いくつかの転写因子と相互作用することを明らかにした。以上のことから、XPGがこれまで考えていたよりも広範囲な転写反応に関与することが示唆された。CS様病態を示す患者細胞の解析では、前年度に得られたCGHアレイ解析により明らかとなった欠損や増幅領域に存在する遺伝子を検索し、病態と関係する可能性があるものをリストアップした。
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