本研究は、大腸菌小分子RNA(sRNA)によるmRNA抑制機構の全容の解明を最終的な目的として、sRNA/mRNA間の塩基対形成の詳細、およびRNA結合タンパク質であるHfqによるsRNA/mRNA間の塩基対形成の促進モデルの解明を目的とする。平成22年度においては、sRNAの一つであるSgrS sRNA/ptsG mRNA(標的mRNA)をモデル系として、SgrS sRNAの一部に対応する合成RNAを用いたin vitro解析を行い、SgrS 168-181 nt領域とptsG mRNAとで形成される塩基対が機能的に十分な最小の塩基対であることを明らかにした(論文(1))。またこれらの解析の中から、SgrS sRNA/Hfqの結合がSgrSの168-181nt領域では不十分であることを示した(論文(1))。後者の結果は、SgrS sRNA/Hfqの結合、およびHfqによるSgrS sRNA/ptsG mRNA間の塩基対形成の促進メカニズムを解明する上で、重要なポイントになると考えられる。さらに、Hfqと結合しsRNAに標的化されたmRNAを速やかに分解させるRNase EとHfqとの結合領域の詳細を解析し、RNase Eの710-750アミノ酸領域がHfqとの機能的な結合に必要であることを示した(論文(2))。これらの結果は、sRNA作動原理の詳細な解明に大きく貢献する。
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