平成22年度は、大腸菌の細胞長を決める細胞骨格タンパク質RodZの解析を行った。その機能を解析するためには、RodZと相互作用する因子の同定が必須である。これまでに、rodZ欠損株の抑圧変異株の単離と変異部位の同定を行った。その結果、zipA遺伝子の上流に変異を持つ株が見つかった。この株ではZipAタンパク質の発現量がわずかに上昇していた。ZipAタンパク質は細胞分裂を制御するタンパク質の一つなので、RodZと細胞分裂の遺伝的相互作用が示唆された。これらの結果は、現在、投稿準備中である。RodZタンパク質は、細胞長に沿って、らせん状に配置されているが、抗RodZ抗体を用いた免疫染色やRodZと蛍光タンパク質mCherryとの融合タンパク質の解析により、RodZがFtsZ依存的に細胞分裂面にも局在することが分かった。特に、RodZは細胞周期の終わり頃に分裂面に局在することが分かった。 大腸菌には他にアクチンホモログMreBとチューブリンホモログFtsZがあって、RodZを含めた全ての細胞骨格タンパク質が空間的、時間的に正しく機能することによって、正しい細胞形態を維持できる。しかし、これらの細胞骨格タンパク質がどのように相互に関連して機能しているかは分かっていない。すでに、RodZがMreBと相互作用することは知られている。そして、本研究によって、RodZとFtsZとの相互作用が示唆された。RodZはMreBやFtsZと相互作用することによって、細胞伸長モードから細胞分裂モードへの変換の制御に関与しているかもしれない。 また、抑圧変異株の解析からペブチドグリカン合成に関与する脂質を合成する酵素の変異体がrodZ欠損株の低温感受性を抑圧することが分かった。また、この変異はrodZを持つ株の低温での生育も改善した。これらの結果は、論文にまとめ、現在投稿中である。
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