研究概要 |
すでに、前年度に申請者はRodZタンパク質が、FtsZ依存的に細胞分裂面に局在することを明らかにしていた。今年度は、RodZタンパク質の分裂面への局在の生理的意義の解明を行った。これまでに、細菌のアクチンであるMreBもFtsZ依存的に分裂面へ局在することが報告されている。申請者は、RodZの分裂面への局在が、MreBに依存していることを明らかにした。これらは、FtsZ-MreB-RodZの細胞骨格タンパク質複合体が、細胞分裂面での生理的機能を担っている可能性を示唆している。申請者は、MreBとの結合が弱くなる点変異をRodZに導入し、この変異により、RodZの分裂面への局在が抑制された。一方、MreBの分裂面への局在は影響されなかった。すなわち、3つの細胞骨格タンパク質は、FtsZ,MreB,RodZの順に分裂面に局在することを明らかにした。また、RodZが分裂面へ正しく局在しない株では、その細胞幅が太くなった。 よって、RodZは細胞幅を制御する因子であることが分かった。さらに、申請者は、精製したRodZが精製したペプチドグリカンと結合することも分かった。つまり、RodZはFtsZとMreBによって分裂面に局在され、細胞分裂時のペプチドグリカン合成を制御することにより、細胞幅を制御している可能性が考えられる。 また、in vitro実験に関しては、米国Duke大学のErickson教授の研究室に2週間滞在し、リポソームに精製したFtsZを封入する系を習得した。すでに、研究室でこの系を立ち上げることができた。今後は、この系を使って、他の細胞骨格タンパク質の機能を明らかにする。 rodZ欠損株の低温感受性を抑圧する抑圧変異体を単離し、全ゲノムシークエンスを行った。この成果は、論文として報告した。
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