多細胞集団における自已組織的パターン形成原理を理解するため、階層横断的・多機能イメージング技術の開発を目的とした。社会性アメーバでは細胞間シクナル因子cAMPによる細胞間相互作用を介して集合流パターン形成が行われるので、細胞内ならびに細胞外のcAMPを定量できるイメージングプローブの開発をめざした。計測対象は、細胞へのシクナル入力と、細胞応答の両方であり、このときシステム全体(10万個の細胞集団)のなかで単一細胞の解像度での計測ができることを条件とした。すでに蛍光性の機能性指示薬(cAMPプローブ)が開発されていたが上述の性能を有していなかったので、本研究ではあらたに化学発光型のcAMPプローブの開発を行った。ウミシイタケ由来のルシフェラーゼと改変型黄色蛍光タンパク質(Venus)の融合遺伝子ならびにPKAに由来するcAMP認識ペプチドを組み合わせることで、マイクロモルレベルのcAMP濃度変動におうじて発光量が10%以上変化する新規BRET型cAMPプローブを開発した。性能評価として細胞内のcAMP濃度変動の計測を調べたところ、細胞数個のミクロスケールから数万個の細胞集団を対象にしたマクロスケールにわたってcAMP濃度の定量計測すること可能であることが確かめられた。しかしながら細胞外のcAMP濃度変動は検出できなかったため、cAMP認識ペプチドへの変異導入により高親和性型の指示薬シリーズの開発中を行っている.
|