多細胞集団における自己組織的パターン形成原理を理解するため、階層横断的な多機能イメージング技術の開発を目的とした。社会性アメーバでは細胞間シグナル伝達因子cAMPによる細胞間相互作用により集合流の形成と細胞の分化が実現されるが、そのシグナル動態の詳細はわかっていない。特に、細胞集団内でcAMPが伝達される機構に比べ、cAMPのシグナルリレーが開始される機構を明らかにする事を目的に、細胞内部ならびに細胞外部のcAMP動態を定量イメージングできるプローブの開発を行った。cAMP濃度の変動レンジは細胞内では0.5-5μM、細胞外では10-100nM程度と推測されていたので、この濃度レンジに感度特性をもつ新規プローブの開発を試みた。センサニドメインに様々な遺伝子のcAMP認識モチーフを利用する事で、乖離定数が10nMから3μMまでの複数の新規プローブの開発に成功した。さらに細胞内と細胞外のcAMP同時イメージングを可能にするため、多次元イメージングのための新規技術の開発を試みた。その結果H22年度から継続中の化学発光遺伝子と蛍光タンパク質の融合遺伝子を基本骨格とする、新規化学発光型cAMP指示薬の開発ならびにその最適化に成功した。本成果を論文投稿した事に加え、細胞内と細胞外のcAMP濃度変動の同時計測を進めており、細胞集団におけるシグナル伝達のダイナミクスを多次元解析が可能となった。
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