研究概要 |
生物の発生・分化の過程では、局所的クロマチン構造変換が一過的な特定遺伝子群の発現変動を制御する。このような局所的クロマチン構造変換を制御するDNA配列の一つに、クロマチンドメインの境界(クロマチンバウンダリー)を規定するインシュレーターが挙げられる。これまでに、インシュレーターを介したクロマチンバウンダリー調節因子が報告されているが、クロマチンバウンダリー制御機構全体を理解するには不十分である。そこで、本研究では、クロマチンバウンダリー制御機構解明のため、ショウジョウバエ分子遺伝学的手法により新規クロマチンバウンダリー調節因子の取得を試みた。平成22年度は、これまでに作出したインシュレーターモデルショウジョウバエを用い、新規クロマチンバウンダリー制御因子の網羅的スクリーニングを行った。その結果、74遺伝子を同定し、網羅的スクリーニングはほぼすべてを完了した。取得因子を機能的に分類とRNA結合性因子やシグナル伝達因子、クロマチン制御因子が多く同定された。特に、クロマチン制御因子はHistone H2Avのdepositionを制御するSwr complexの構成因子[Gas41,Reptin,E(Pc),Brd8]が含まれていた。H2Avがクロマチンバウンダリー周辺に多く分布することを考えると、本スクリーニングでは、意味のある因子が取得出来ていると考えられる。次に、候補因子のなかでもDEAD box helicase domainを持つ新規因子に着目して、解析を進めたとところ、既知インシュレーター結合因子との相互作用を見出し、クロマチンリモデリングを介してクロマチンバウンダリーを調節することが示唆された。
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