研究課題
本研究の目的は、鞭毛運動や走光性のモデル生物である単細胞緑藻クラミドモナスを用いて、鞭毛運動のレドックス(酸化還元)調節の分子機構を明らかにすることである。平成23年度~繰り越しの平成24年度は、レドックス調節機構に異常のある3つの変異株の原因遺伝子同定を開始した。基礎生物学研究所分析室との共同研究により3株の全ゲノムの解読を行った。うち1株について特に良好なシーケンスデータが得られたため、現在野生株ゲノムとの比較および連鎖解析により原因遺伝子の絞り込みが進行中である。さらに、基礎生物学研究所皆川純教授のグループとの共同研究により、光合成のステート遷移が走光性を調節する細胞内レドックス状態変化の源になっている可能性をつきとめた。光そのものがシグナルとなるのではなく、光を受けた結果葉緑体が作り出すシグナルが細胞の運動性を変化させるという、新しい調節経路を発見したことになり、光合成研究の上でも、細胞運動調節機構の研究においても意義深い。現在、この発見を確かなものにするため、ステート遷移不能株の走光性観察、レドックス感受性蛍光タンパク質によるステート1,2誘導時の細胞内レドックス状態観察実験が進行中である。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに次世代シーケンスを行うことができ、また光合成が生み出すレドックス状態変化の源を見出したことによって、到達目標であった調節経路の分子機構の一端が明らかになりつつある。
次世代シーケンサーを用いた、レドックス・センシングおよびシグナリングに異常をもつクラミドモナス変異株の原因遺伝子解析を第一目標とする。次に、ステート遷移と細胞内レドックス状態および走光性符号の連関をレドックス感受性タンパク質の利用によって明らかにすることを第二目標とする。
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