研究課題
本研究の目的は、鞭毛運動や光合成のモデル生物である単細胞緑藻クラミドモナスを用いて、細胞内のレドックス状態の変化がどのような機序でセンスされ、それが細胞行動に反映されるのかを探ることである。この研究の過程で、クラミドモナスが示す走光性の正と負(光源に向かうか、逃げるか)が、細胞内レドックス状態の変化によるものであることを見出した。即ち、細胞内が酸化的になると正の走光性、還元的になると負の走光性を示すのである。これは、従来「光合成のための最適光環境」に棲むための行動であると考えられてきた走光性が、「最適な細胞内レドックス状態」を維持するための行動であることを示唆しており、細胞行動の理解において重要な知見であると考えられる。さらに、その分子メカニズムを明らかにするために、クラミドモナスのミュータントの研究を行った。細胞内レドックス状態と走光性の正・負の関係が異常である3種の変異株(1種の新規変異株を含む)を見出し、そのうち1種の原因遺伝子を明らかにした。意外なことに、原因遺伝子がコードするのは色素の生合成に関わる酵素であった。既知の酸化還元酵素や運動関連のタンパク質でなかったことは、レドックス・センシングやシグナリングが予想外に広い種類のタンパク質が関わっていることを示唆しており、興味深い。この遺伝子産物の機能、さらには現在解析中の他の2種の原因遺伝子を今後明らかにすることで、細胞内レドックス状態のセンシング機構や伝達機構の解明に貢献すると考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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