哺乳類胎生期から生後発達期にかけての脳組織でみられる神経細胞の移動や突起伸展においては微小管およびアクチン細胞骨格系が中心的役割を果たす。これらの細胞現象には神経系に大量に発現するセプチン細胞骨格系の関与も示唆されているが、その詳細やメカニズムは不明である。そこで本研究では、マウス神経回路形成過程におけるセプチン機能を探索した。高密度分散培養した大脳皮質ニューロンから必須サブユニットSEPT7をRNAiで欠乏させたところ、軸索と樹状突起の伸展が同程度(約30%)阻害された。類似の所見は大脳皮質体性感覚野ニューロン軸索の対側への投射の阻害としてin vivoで再現された。以上から、軸索・樹状突起に共通するセプチン要求性の伸展機構の存在が示唆された。微小管は軸索や樹状突起を構成する重要な細胞骨格分子であることから、SEPT7欠乏ニューロンにおける微小管の状態を検討した。結果、SEPT7欠乏ニューロンにアセチル化されたalpha-チューブリンが過剰蓄積していることを見出した。本研究により、セプチンがチューブリンのアセチル化を制御して微小管再編成を保障するメカニズムを見出した(投稿中)。
|