研究概要 |
本研究はがん転移に関わるチロシンホスファターゼPRLが、酸化還元状態に応じて分子の形を変え、シグナル伝達を制御する、いわばレドックスセンサーとして機能するという全く新しい切り口からそのシグナル伝達機構を解明しようとするものである。 既にPRLの結合蛋白質として同定済みのMEP50に関して、PRLファミリー分子(PRL-1,-2,-3)における結合性を免疫沈降法により検証した結果、PRL-3との複合体形成が最も明確に観察された。このことは、非常にアミノ酸相同性が高く、そのためこれまで機能的に同一と考えられてきていたPRL蛋白質の間に、異なった機能的側面を有していることを示唆している。一方、MEP50以外にもPRLに結合する蛋白質を探索し、質量分析の結果、プロテアソームの構成因子PSMC6など複数の蛋白質を新規PRL結合因子として同定した。PSMC6については、免疫沈降法による複合体形成の確認に加えて、精製蛋白質を用いたin vitroの実験において、PRLとの直接相互作用を検出している。また、PSMC6についても、MEP50と同様の手法でPRLファミリー分子における結合性を検証したところ、PRL-3と最もよく複合体を形成することが判明した。PRL分子の中で、特にPRL-3ががん転移との明確な因果関係が立証されており、今回明らかとなったPRL-3とMEP50およびPSMC6との相互作用ががん転移に寄与している可能性が考えられる。
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