グルコース(ブドウ糖)は、真核生物にとって根幹的な炭素源であり、またエネルギー(ATP)源です。従って、効率的にグルコースを消費(取り込み・代謝)することが、エネルギー依存的な生理プロセスを進めるために重要となります。本研究では、低濃度のグルコースを効率的に利用するために必要となる遺伝子を網羅的に同定することを第一の目標としています。さらに、それら遺伝子産物の生理機能を同定し、「効率的グルコース利用に必要な」機能ネットワークを明らかにしたいと考えています。 研究はおおむね計画通りに進行しており、これまでに、低グルコース環境でのみ特異的に生育できなくなる分裂酵母変異体(Igs変異体)のスクリーニングおよび確認作業をほぼ完了し、約150の変異株を得ました。それらの変異株について、グルコースの利用速度を測定したところ、予想通り多くの変異体では、低濃度のグルコースを効率的に取り込めなくなっていることが分かりました。現在、それらの変異遺伝子の同定作業を進めていますが、A)タンパク質リン酸化シグナリング、(B)膜輸送経路、(C)ミトコンドリア機能、(D)細胞骨格制御、多様な細胞機能が効率的なグルコース利用に必要であることが明らかになりつつあります。特筆すべき事に、同定された遺伝子の多くは酵母からヒトまで進化的に保存されています。 なお、本研究での「低濃度グルコース」とは、ヒトにおける空腹時血糖値とほぼ同程度の0.4~1.0mg/mlを指しています。従って本研究の遂行によって、血糖値コントロールの分子メカニズムの一端が垣間見えるのではないかと期待しています。
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