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コヒーシンは姉妹染色分体の接着に中心的な役割を果たすタンパク質複合体である。本年度は、これまでに確立した方法によって組換えタンパク質から様々なコヒーシン複合体を再構成し、それらの複合体の機能をカエル卵無細胞系において評価する方法を検討した。しかしながら、無細胞系ではコヒーシンの除去・機能阻害による染色分体の接着異常がそれほど顕著ではないこと、解析に十分な濃度の複合体を調製するのが困難であること、といった技術的な理由から当初の計画通りに研究を進展させることはできなかった。一方、無細胞系を用いた解析において、コヒーシンと染色体凝縮に必要な複合体である2つのコンデンシン(IとII)との機能的連関を見出すことができた。コヒーシンは、その大半が分裂前期に染色体腕部から解離することによってコンデンシンIIの染色体軸への集積を促すが、染色体上に残ったものはコンデンシンIと協調して姉妹染色分体の並列性の維持に貢献する。さらに、免疫除去法を改良した実験方法を導入することによってコンデンシンIとIIの機能の差異も明らかにすることにも成功した。これらの結果に基づいて、分裂期染色体の形状は、コヒーシンとコンデンシンIとIIの機能のバランスで決定されるというモデルを発表した。また、本研究で培った手技や着想を発展させ、精製タンパク質を用いて染色体そのものを再構成する試みも始めた。既に、染色体構築に必要かつ十分な因子の確定、それらの間の機能的相互作用、クロマチン繊維の染色体内に折れ畳まれ方など、従来の手法では解析の難しかった問題を解くための手がかりが得られている。
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