昨年度までの成果として、ヒアルロン酸経路上にあると予想され、心臓での発現が検出された遺伝子を7種類(MA65、MA74、MA115、MA121、MA128、MA135、MA140)、心臓形成に関与しうる血管での発現が検出された遺伝子を6種類(MA74、MA93、MA103、MA107、MA108、MA128)、肝臓での発現が検出された遺伝子を4種類(MA100、MA125、MA145、MA148)、血球での発現が検出された遺伝子を12種類(MA69、MA83、MA88、MA93、MA109、MA112、MA118、MA120、MA122、MA126、MA128、MA133 )同定した。 それらの中から、心臓形成に正の制御を行っていると予想されるMA107、MA135、MA140にまずは注目し、これらの遺伝子の心臓原基への過剰発現を行った。MA107を過剰発現したところ、尾芽胚期にかけて心臓形成が抑制されることが分かった。よって、MA107は、心臓原基の細胞増殖や心臓形成の促進ではなく、心臓形成に対して負の制御を行い、結果としてその制御が正に働くことで、正常な心臓形成が行われるということが予想された。MA135の過剰発現実験では、心臓形成に影響は見られなかった。よって、MA135は、初期の心臓形成には重要ではない、あるいはMA135の発現量が心臓形成に必要な量を十分に満たしている場合、それ以上の発現があっても心臓形成には影響しないことが予想された。MA140を過剰発現した胚では、原腸形成に阻害が見られたことから、MA140は原腸陥入以前からの発生に強く関係していることが予想された。今後は、これら遺伝子の変異配列や機能欠失、過剰発現時期の検討を進める一方、それら以外の候補遺伝子においても同様に解析を進め、それらの相互関係や、既知のシグナル経路における作用機序を明らかにする。
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