研究課題
本研究は、ヒト細胞に導入したDNA結合ビーズ(DNAビーズ)の周囲に形成される'非分解系'の膜構造について、膜のアセンブリー機構を顕微鏡イメージングによって解明し、DNAビーズの初期認識に関わる細胞内センサー因子を同定することで、細胞による外来異物認識機構の一端を解明することを目的としている。昨年度までの研究で、エンドサイトーシスによってDNAビーズをHeLa細胞内に取り込ませると、ビーズ周囲にbarrier-to-autointegration factor(BAF)およびBAF結合能を持つ核膜内膜タンパク質が集積すること、および、BAFの集積が見られてから約10分が経過した時点で、DNAビーズ周囲を部分的に取り囲むような核膜様の膜構造が形成されることが分かった。そこで今年度は、BAFがDNAビーズ周囲における膜構造の形成にどのように関与しているかについて詳細に解析した。まず、pH感受性色素であるpHrodoを利用してエンドソーム崩壊とBAF集積の時間的な関係を調べたところ、BAFはエンドソーム崩壊から30秒以内という非常に早い時間帯にDNAビーズ周囲に集積し始めることが分かった。一方、この時間帯では、オートファジー関連の(分解系の)膜構造はビーズ周囲に見られなかった。次に、RNAi法による機能解析を行ったところ、内在性BAFの発現抑制により、DNAビーズ周囲における非分解系の膜構造の形成が阻害され、代わりに、オートファジー様の膜構造がビーズ周囲を取り囲むように形成されることが分かった。これらの結果は、BAFが細胞内に侵入してきた外来DNAを認識し、オートファジーとは異なる非分解系の膜構造の形成に関わるセンサーとして働いていることを示している。本研究で得た知見は、効率良い遺伝子デリバリー法の開発等に直結するため非常に意義深いといえる。
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http://www2.nict.go.jp/advanced_ict/bio/w131103/CellMagic/