microRNA(以下miRNA)は、mRNAに結合して転写後レベルの抑制を引き起こす新たな階層の遺伝子発現制御因子である。総遺伝子のうち30~50%が数百のmiRNAによって制御されていると試算される一方、その生理機能が明らかになっているmiRNAは未だ氷山の一角でしかない。本年度は小型淡水魚ゼブラフィッシュを用いて骨格筋で発現するmiRNAであるmiR-1による血管形成制御機構を解析し、以下の知見を得た。 1)これまでの予備的結果から、miR-1が細胞非自律的に血管形成を負に制御していることが明らかとなっていた。そこでこの過程に関わる標的遺伝子の探索およびレポーター実験系による評価を行った。その結果、血管形成促進因子であるVEGFAaおよびVEGFAbの3'UTR中にあるmiR-1標的配列を介して、実際にmiR-1による転写後抑制が引き起こされることを見出した。 2)VEGFA以外の血管形成因子についても同様の解析を行った結果、これら既知の因子はmiR-1の標的配列を有していないか、有してはいるが効率的に抑制されないことが明らかとなった。 3)miR-1の機能阻害時による血管形成促進の表現型を詳細に解析した結果、血管を形成する細胞数が増加していることが明らかとなった。この表現型はVEGFAの過剰発現時においても観察された。 以上の結果から、miR-1は分泌因子VEGFの発現を直接的に負に制御することで、血管形成のバランスをコントロールしている可能性が強く示唆された。
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