研究概要 |
平成22年度は、脊椎動物の体性感覚地図の進化について解析するため、ニワトリ胚、カメ胚を入手し、三叉神経のラベルとその軸索の形態を観察した。さらにナマズ胚も入手し、発生を追って詳細なラベル実験を行い、体性感覚地図の形態を解析した。これらと平行して、ヤツメウナギ、アフリカツメガエル、アホロートルでも同様の解析を行った。その結果、側線神経系を持つ水棲脊椎動物では三叉神経による体性感覚地図が不明瞭であり、かわりに側線神経系による感覚地図が発達していることが判明した。一方で側線神経が未発達なヤツメウナギや側線神経が消失した羊膜類では三叉神経系による感覚地図が発達Lていた.つまり、頭部の近くを司るふたつの神経系は、どちらかが発達すればどちらかが退縮するという相互関係の元で進化してきた可能性が示唆された。また、カメとマウスの三叉神経の投射パターンを比較したところ、マウスでは上顎枝と下顎枝が側枝を形成しながらDrVに投射するのに対し、カメでは軸索がそのままPrVに入って局在していた。さらにカメ胚ではDrg11,EphA4,Sema3aなどの軸索ガイド遺伝子の単離を行い、それらの発現を見ることで感覚地図の進化に関する分子機構について解析した。その結果、三叉神経主知覚核のマーカーであるDrg11はカメにおいてマウスやニワトリで界、られるのと同様な発現をしており、この神経核が羊膜類に共通に存在している可能性が示された。しかしながら、感覚地図の形成に関わるとされるEphA4の発現パターンは、カメではマウスと異なり、PrVのなかで勾配を持って発現していた.このようた発現パターンの違いが、カメとマウスでの体性感覚地図の基本形態の違いに関わっている可能性が考えられる。23年度には上記のことに関してより詳細な解析を行う予定である。
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