研究課題
平成23年度は体性感覚地図の進化過程について、ニワトリ、カメ、ヤツメウナギ等の動物を用いて解析を進めた。まず、体性感覚地図の形成におけるマスター制御遺伝子であるHoxa2相同遺伝子の発現を、ニワトリ胚、カメ胚を用いて時間的空間的に解析した。さらにHoxa2の下流遺伝子であるDrg11、EphA4などの発現パターンの解析をニワトリ胚とカメ胚で行い、マウスで知られている分子機構の何処までが共通で、どこからが異なるのかを解析した。その結果、体性感覚地図形成に関わる遺伝子群はニワトリとマウスで大きく異なっており、マウスではロンボメア2で形成される三叉神経主知覚核(PrV)は、ニワトリではロンボメア1で形成されることが判明した。このことから、体性感覚地図を作る仕組みは羊膜類の系統の中でそれぞれ異なり、顎領域の多様化に合わせるように神経系にも改変が為されている可能性が示唆された。この研究成果は論文にしてJournal of Comparative Neulogyに投稿中である。さらにカメでは融中枢の感覚地図を担う神経路である終脳-視床での連絡について解析し、マウスのそれと比較して感覚神経回路の進化について考察した。一方、ヤツメウナギやカエルなどの無羊膜類でも前年度に引き続いて解析を進めた。今年度は末梢神経系(頭部三叉神経ならびに体幹部脊髄神経)と中枢神経系(延髄・小脳)の両方に注目して研究を進めた。その結果、円口類のヤツメウナギの延髄にはPrVが存在しない可能性が示唆された。つまり、PrVは顎の進化に伴って獲得された可能性が示唆された。さらに、ナマズ胚、ヒラメ胚、フグ胚で三叉神経の形態を解析し、ナマズでは体性感覚地図の形態を神経ラベル実験によって明らかにした。さらにフグでは行動解析により孵化仔魚の神経系の機能についても考察した。これらのうちフグで得た知見は論文にまとめ、現在投稿中である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Developmental Biology
巻: 355 ページ: 164-172
Marine Pollution Bulletin
巻: 63 ページ: 297-302
巻: 63 ページ: 356-361