研究課題
マウス生殖細胞は、幹細胞維持に関わる"germ cell program"遺伝子群の再活性化と、体細胞分化を誘導すると考えられる"somatic cell program"遺伝子群の発現抑制を伴って形成される。我々は、生殖前駆細胞において転写調節因子であるSall4を特異的に欠損させると、"germ cell program"遺伝子群陽性の生殖細胞は形成されるが、それらの生殖細胞では、"somatic cell program"遺伝子群の抑制がおこらず、やがて細胞死をおこすことを見いだした。Sall4欠損ES細胞のin vitro分化系を用いて解析をおこなった結果、1)"somatic cell program"遺伝子であるHoxA1の遺伝子座にSall4が結合すること、2)Sall4欠損ES細胞では、HoxA1の発現上昇が認められること、3)、伽ノの遺伝子のプロモーター領域のヒストンの低アセチル化状態がSall4欠損ES細胞の胚様体では維持されていないこと、4)HoxA1の遺伝子座には、"somatic cell program"の抑制に必須の役割を担っていることが知られているPrdm1も結合し、その結合はSall4依存的に増強されることを明らかにした。Sall4は、Prdm1のみならず、ヒストン脱アセチル化酵素群とも複合体を形成した。以上のことから、生殖細胞形成過程においてSall4が、Prdm1を含む抑制因子群を標的遺伝子座に誘導することにより、エピジェネティックな修飾変化を促進させ、"somatic cell program"遺伝子群の発現抑制を制御していると考えられた。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Developmental Dynamics
巻: 240 ページ: 394-403
10.1002/dvdy.22528
Development, Growth and Differentiation
巻: 53 ページ: 843-856
10.1111/j.1440-169X.2011.01292.x