本研究では、動物の胚発生におけるヒストンメチル化修飾の分布とその意義を解明するために、カタユウレイボヤをモデルに次の2つの実験を行う。1、クロマチン免疫沈降-定量的PCR法(ChIP-qPCR法)により、代表的なヒストンメチル化修飾であるヒストンH3の4番目のリジンのトリメチル化(H3K4me3)とヒストンH3の27番目のリジンのトリメチル化(H3K27me3)のクロマチン上での分布を明らかにする。2、ヒストンメチル化修飾を担う因子であるヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)とヒストンデメチラーゼ(HDM)について、カタユウレイボヤの持つ全遺伝子を同定し、胚期における発現と機能を明らかにする。本年度は、それぞれ次のような結果を得た。1、最初にChIP-qPCR法の条件検討を行い、ヒストン修飾の検出に適した条件を決定した。次に、カタユウレイボヤ胚の多くの細胞で活発に転写されている遺伝子と、胚期には転写されていない遺伝子を複数選び、遺伝子の転写領域および上流領域と下流領域におけるヒストンメチル化修飾の分布を調べた。その結果、活発に転写されている遺伝子のH3K4me3修飾については、転写領域に存在し、上流領域と下流領域にはほとんど存在しないことがわかった。胚期に転写されていない遺伝子およびH3K27me3修飾については現在実験が進行中である。2、カタユウレイボヤには23種類のHMT遺伝子と17種類のHDM遺伝子が存在していた。このうち22種類のHMT遺伝子と全HDM遺伝子について胚期における発現パターンを調べた結果、17種類のHMT遺伝子と9種類のHDM遺伝子が胚期に発現していることがわかった。
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