Shh遺伝子の肢芽エンハンサーであるMFCS1について、Hxタイプの点突然変異を有する領域のDNA断片を用いたイーストワンハイブリッド法を行い、Msx1タンパク質が結合することを明らかにした。ゲルシフトアッセイにより、このHx点突然変異を含む40bpのDNA断片にマウス肢芽の核タンパク質が結合することをすでに明らかにしていたが、抗Msx1抗体を用いたスーパーシフトアッセイにより、この肢芽の核タンパク質がMsx1であることを確認した。 Msx1のMFCS1を介した転写に対する影響を調べるため、培養細胞を用いたルシフェラーゼアッセイを行った。Msx1単独では、Hxタイプの変異の有無に関わらず、転写の活性化作用は認められなかったが、Pax9と共発現させた細胞においては、有意なルシフェラーゼ発現の上昇を示した。 また、MFCS1内にはヒトやマウスで多指症を呈する点突然変異が複数報告されている。ヒトの5ヶ所、マウスのHx以外の2ヶ所、ニワトリの1ヶ所のそれぞれの領域についてもレポーターコンストラクトを調製してトランスジェニックマウスを作製し、レポーターの発現パターンを解析した。他の点突然変異を含むDNA断片はHxとは異なり、肢芽の前側にレポーター遺伝子の発現を誘導することはなかった。このことから、肢芽エンハンサー内に変異を有し、多指という一見同様に見える症状を呈していてもそのエンハンサー上では異なる制御がなされていることが示唆された。特にHxは、正常には結合しないMsx1タンパク質が結合するようになることから、Gain of functionタイプの突然変異であることが明らかにされた。
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