本研究は精子幹細胞を制御する微小環境(ニッチ)の実体を細胞・分子レベルで解明することを目的とする。平成24年度は、これまでに同定したニッチ特異的発現遺伝子の中から、CXCL12に的を絞って解析を進めた。発現解析の結果、CXCL12を発現する細胞が、精細管を覆うシート状構造をすること、さらに、血管・間質近傍に分布することが明らかとなった。次に、CXCL12発現細胞と精子幹細胞集団の位置関係を調べた。連続精巣切片を用いて調べた結果、ほとんどの精子幹細胞がCXCL12発現細胞の近くに分布していた。さらに培養下において、精子幹細胞はCXCL12発現細ま胞の周りに集まること、そして、精子幹細胞の増殖をCXCL12発現細胞が促進することが明らかとなった。以上の結果から、CXCL12発現細胞は精子幹細胞の近くで精子幹細胞の位置と増殖を制御する可能性が示唆された。本研究により、未だ明らかにされていない精子幹細胞ニッチの候補となる細胞が初めて提示された。
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