個体発生において、多細胞組織がどのようにして正しいプロポーションを獲得するのかは、発生生物学の中心的な問題の一つである。先行研究から組織成長と細胞分裂の方向性の連関が示唆されていたが、細胞分裂の角度分布の制御機構の多くは不明であった。本研究では、独自に開発した細胞の「かたち」から細胞にかかる「機械的な力」を推定する手法を活用することで、多細胞組織の応力場の偏りと個々の細胞の分裂方向の相関を明らかにした。さらに、組織成長の数値計算から、実験的に観察された細胞分裂方向決定ルールが組織成長の安定性を高めることを示唆する結果を得た。
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