研究課題
シュペーマンが両生類胚において見出した背側オーガナイザーは、今や様々な脊椎動物で共通の概念であり、誘導現象の分子実体やオーガナイザーの形成機構について多くの知見が蓄積されている。中でも母性Wntシグナルは、進化的にも発生学的にも脊椎動物オーガナイザー形成の出発点と目される。Xenopus胚においては、siamoisとそのパラログtwinが母性Wntシグナルから直接の標的遺伝子として発現調節され、転写活性化因子としてその下流機能を担う事が知られている。具体的にsiamois/twinは、過剰発現により頭部を持つ完全二次軸を誘導し、機能阻害により頭部欠損の表現型となる。しかしながら、このようなXenopus胚発生における重要性、または、近年の様々なゲノム情報の蓄積にも拘らず、これまで他の生物でのsiamois相同遺伝子は見つかっていなかった。本研究では、Xenopus胚で完全二次軸を誘導できる因子として、最も原始的な条鰭類ポリプテルスのsiamois関連遺伝子dioskouroi(dlos)を単離した。前年までに、diosがsiamois同様に転写活性化因子として働き、Xenopus胚発生におけるsiamoisの内在機能を補完できる事がわかっていた。従って、diosはsiamoisの相同遺伝子である。しかしながらsiamoisとは異なり、ポリプテルス胚発生において、diosは背側Wntシグナルの下流でオーガナイザー形成のみならず中内胚葉の分化にも必要とされる事がわかった。このsiamoisとdiosの両動物種における役割の違いは、初期胚のパターニングにおける母性Wntシグナルを中心とした遺伝子ネットワークがどのように多様化したのかを知るための足がかりとなる。
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Journal of Experimental Zoology Part B : Molecular and Developmental Evolution
巻: 316B ページ: 526-546
http://transcriptome.cdb.riken.go.jp/vtcap/
http://www.evo-devo.net/posters.html