研究課題
検討する表現型として、耐寒性の測定が予定よりも遅れており、その代わりに耐寒性よりも条件設定が容易な開花タイミングなどの生活史形質についての研究が進んでいる。母親が異なる環境を経験している実験室第一世代と、母親が共通の実験室環境を経験している実験室第二世代の間で、開花タイミングに世代がどのように効果を与えているかを長日条件の実験室で栽培して解析した。その結果、低標高に由来する集団ほど開花タイミングが早く、高標高集団ほど春化処理(発芽後の低温処理)が開花を促進する効果が大きかった。世代の効果としては、低標高の集団では、第二世代の方が第一世代より、春化処理が開花を促進する効果が大きかった。このような母性効果が発芽タイミングなどの他の形質でも見られるのか、検討中である。また、短日条件のもとでは、標高と開花タイミングの間にどのような関係があり、世代間にどのような違いがあるかを測定する実験を開始した。ミヤマハタザオ28集団・タチスズシロソウ8集団を、低・中・高標高の圃場に移植する実験を継続して行い、生存や開花タイミングを測定した。その結果は現在解析中である。昨年度までにアジレント社のシロイヌナズナ用マイクロアレイを用いて、高標高ミヤマハタザオ・低標高ミヤマハタザオ・タチスズシロソウ各8集団のゲノム塩基多型を調べ、開花関連遺伝子のいくつにゲノム多型があることが分かっていた。そこで、開花関連遺伝子CRY1(クリプトーム遺伝子)・GI(概日時計遺伝子)を対象に、塩基多型と自然淘汰を詳細に検討するために、次世代シーケンサー(454 GS Junior)によってミヤマハタザオ20集団の各20個体の塩基配列を決定した。その結果、これらの遺伝子に塩基多型があることが確認され、中立の下で期待されている水準を超えて対立遺伝子頻度が集団間で著しく異なっていることが分かり、分断化淘汰を受けている可能性が示唆された。
3: やや遅れている
耐寒性の測定条件の最適化が遅れている。また、ゲノム修飾多型の解析が着手できていない。
対象とする表現型については、耐寒性の測定を進めつつも、開花タイミング等の測定が確立されている表現型について順次研究を進めていく。ゲノム修飾変異については、現時点における効率的な手法を検討した上で着手していく。
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Journal of Ecosystem and Ecography
巻: S6(電子出版) ページ: 001
doi:10.4172/2157-7625.S6-001