研究課題
生物が自らの生息環境に適応する仕組みを理解することは、生物の多様な形質の進化や、種の形成を理解する上で重要である。適応に関係する形質の一つとして「感覚系」は、特に注目に値するものの一つである。本研究では、モデル小型魚類であるメダカを材料にして、行動解析および進化遺伝学的解析を行うことで、化学物質を認識する感覚である「嗅覚」の適応進化機構の解明につながる知見を得ることを目指す。今年度は、遺伝的に異なるメダカ近交系2系統(Hd-rR,HNI)を飼育・繁殖するための設備の整備と、これらを用いた嗅覚の行動解析(匂い物質に対する誘因、忌避の比較)を行う実験系の立ち上げを行い、いずれもほぼ確立することができた。メダカの近交系では、Hd-rRおよびHNIいずれの系統でもゲノム配列が解読されているため、それらの情報を解析することによって、それぞれの系統のゲノム中に存在する嗅覚受容体遺伝子(OR)を特定することができた。また、遺伝子配列情報の比較に基づいて、2系統間でのOR遺伝子ファミリーにおける塩基配列および遺伝子数の変異を特定することにより、メダカ種内に見られるOR遺伝子の多型を網羅的に特定することが出来た。来年度は、メダカ自然集団も活用してさらに行動解析や遺伝子発現解析などを進め、メダカ種内における嗅覚の行動レベルでの変異と遺伝子レベルでの多型の関係を明らかにすることにより、嗅覚の適応機構の解明につながる情報が得られると期待される。
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Comparative Biochemistry and Physiology, Part C
巻: 153 ページ: 17-23
doi:10.1016/j.cbpc
月刊海洋
巻: 42 ページ: 372-378
http://www.kaiyo-chikyu.com/