チンパンジーの父親-母親-息子の白血球細胞から調整したRNAサンプルを用いて、新型シーケンサー(Illumina社Genome Analyzer)による比較トランスクリプトーム解析を行なった。3個体から3.2~4.8Gbの配列を決定し、チンパンジーの既知配列にマッピングした結果、全遺伝子の半数以上の遺伝子において、少なくとも一つ以上のタグがマッピングされ、ゲノム配列が報告されているチンパンジー参照配列との比較において、約10万個のSNP多型と1万数千個のINDEL(挿入欠失)多型を検出した。また、父親-母親間に1万8千個あまりのSNPを検出し、それらのゲノム上の位置を調べたところ、コーディング領域よりも非翻訳領域(特に3'末端)にSNPの存在確率がより高いという結果を得た。これは、個体差を産み出すには遺伝子発現制御領域における多様性が重要であることを示唆する結果であった。新型シーケンサーはアリル特異的な遺伝子発現の定量化が可能なため、親子トリオを調べる事によって、より直接的なインプリント遺伝子の発見が可能になり、実際にヒトやマウスで知られているインプリント遺伝子がチンパンジーにおいても確認されたのに加えて、免疫系を担う遺伝子群を中心に、今まで報告のない新規インプリント遺伝子を多数発見した。
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