研究の背景と目的 近年、メタゲノム解析から、腸内細菌叢が、炭水化物を効率良く分解し、生じたエネルギーを宿主に提供することで、肥満と痩せに関係していることが示された。しかしながら、タンパク質の代謝に関する腸内細菌叢に関する研究例はほとんどなく、その詳細は明らかではない。本研究では人類生態学で大きな問題とされてきた低タンパク食適応について、申請者が専門とする細菌学的な手法を応用してこの問題を明らかにする。そのような腸内細菌叢の進化と現生人類の食生態の多様性から人類進化の一側面を明らかにすることを目標とする。 研究実績の概要 1)本申請者は、2011年度において、パプアニューギニアの高地に住む人々(タリ地域)から窒素固定遺伝子を持つ細菌を見出した。 2)前年度に開発した窒素固定能確認試験培地(無窒素培地)上での生育を確認した。 3)水素ガス検出法による窒素固定能を確認し、分離した細菌が窒素固定能を有していることを確認した。 4)また37℃においても窒素固定能を有することを見出した。 これらの知見はヒトの窒素固定細菌による窒素固定が行われている可能性が高いと考えられる。今後、これらの知見を踏まえ、本申請者が分離した窒素固定遺伝子を保有しかつ窒素固定能を有する株を用いて動物実験を行うことで、哺乳動物における窒素固定細菌の役割を検討することが可能になると考えられる。
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