本研究では、アジア・アフリカ地域を中心として、化石人類および化石類人猿について、大臼歯歯冠三次元形態を詳細に比較分析し、各種の特徴を明らかにすることを目的としている。それによって同地域の化石人類・類人猿各種間の系統関係について大臼歯形状の観点からどのようなことが言えるのかを吟味するとともに、大臼歯形状の各特長の適応的意義の解釈を深めることを目指すものである。 平成25年度も引き続き中国産化石類人猿のデータ取得を進めた。平成25年7月には中国・北京の中国科学院古脊椎与古人類研究所を訪問し、広西チワン族自治区崇左地域から発掘されたギガントピテクス化石の観察と研究相談をおこなった。これらのギガントピテクス化石研究については、エナメル質分布特徴および小臼歯形状の時代変化について平成25年中に国際誌Quaternary Internationalの特集号に2編の論文を発表した。またこの過程で中国南部に見られる霊長類相全体の変遷についての論文発表にも参加した。これらの研究およびギガントピテクス歯冠サイズの時代変化に関する検討結果を国内学会において発表した。 このほか、インドネシア産化石資料や台湾産化石資料のマイクロCT撮像およびデータの分析を進めたほか、平成26年1月にはミャンマー古生物調査に参加し、類人猿化石産出の可能性のある中新世後期の地層の路頭のサーベイをおこなった。
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