研究課題
本年度は、歩行動作における下腿部および大腿部協働筋群の筋弾性機能発揮の調節について、座位作業者的な生活を行っている人々と、日常的な脚運動に慣れているアスリートの筋電図を比較した。被験者は、サッカーおよび陸上競技を専門とする男子大学生11名(運動選手群)と過去2年間以内に習慣的な運動を行っていない男子大学生11名(非運動選手群)を対象とした(本報告には、解析の終了した運動選手群11名と非運動選手群4名の結果を報告する)。実験室内のトレッドミル上にて、速度3条件(3km/h(ゆっくり)、4.5km/h(普通)、6km/h(早歩き))、および傾斜角度3条件(平地、下り(-5%)、登り(+5%))の合計9条件の自由歩行を行った。下肢協働筋(腓腹筋内側頭、同外側頭、ヒラメ筋)および大腿部協働筋(内側広筋、大腿直筋)にアンプ内蔵型筋電図電極を取り付けた。また、各々の筋から得られた筋電図信号を、膝関節および足関節角度情報から伸張期(Ecc)と短縮期(Con)に分類し、それぞれの積分筋放電量の比(Ecc/Con比)を求め、さらに各被験者の平地4.5km/hにおけるEcc/Con比を元に各条件の測定値を規格化した。各条件の解析歩数は約20歩とした。その結果、下腿筋群については、両群全ての傾斜条件において、歩行速度の増大に対応してEcc/Con比が有意に低下する傾向がみられた。また、下腿部協働筋間にEcc/Con比の有意差は見られなかった。これらの結果は、歩行速度増大に伴って下腿筋群の弾性が低下している(足関節の剛性が高くなっている)ことを意味しているが、速度増大に伴う着地衝撃の増加から足関節を守る生理学的利点があると考えられる。一方、大腿筋群は下腿筋群とは異なり、Ecc/Con比は速度増加に伴って有意に増加した。エネルギー消費を最小化するためには、脚筋の弾性を高める必要があると考えられるが、下腿筋群で低下した筋弾性を大腿筋群が補っていることが示唆された。
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Journal of Physiological Anthropology
巻: Vol.30, No.4 ページ: 153-160
健康・スポーツ科学研究
巻: 13 ページ: 25-28
巻: Vol.29, No.2 ページ: 65-70