現存する陸上生物の中で、直立二足移動が可能な生物はヒトだけである。しかしながら、ヒトが進化の歴史の中で直立二足移動を獲得するにあたって、腰痛や痔、立ち眩み、低い最大疾走速度など、幾つかの生物的な不利益を併せ持つことになった。一方、直立二足移動によって巨大な頭部重量を支えることが可能になったことや、極めて高い運動効率(=エネルギー消費量の節約)を獲得したことなどの利点がある。代表的な直立二足移動形態である歩行動作や走動作を遂行するための下肢筋群には、類似した機能解剖学的役割を果たす協働筋群がある。一見、生物学的には無駄に見える協働筋の存在意義として、例えば筋疲労や加齢などによる筋力低下を相補的に補い合う機能があるのかもしれない。そこで本研究では、1)高強度等尺性運動における大腿部協働筋群の筋活動様相、2)高強度ダイナミック運動時における大腿部協働筋群の筋活動様相、3)歩行運動中の下肢協働筋群の筋活動様相、について生理人類学的な視点から検討した。
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