現在の日本の水稲育種は近年育成された品種同士の交雑に由来するものが多く、表現形質や遺伝的多様性の狭い範囲で留まっている。水稲品種「山田錦」は酒米として現在も栽培され、日本酒造りに重要な心白を有し、大粒で、晩生であり、現代品種には見られなくなった特徴を数多く保有している。本研究は「山田錦」の特性である心白、大粒、晩生の3つの形質に着目し、「コシヒカリ」を遺伝的背景とし、「山田錦」ゲノムを網羅する一連の染色体断片を導入した染色体断片置換系統群を作出するのと同時に、今年度は心白を中心した分析を始めた。 「コシヒカリ」と「山田錦」との交雑F_1に、「コシヒカリ」を反復親に使った連続戻し交雑を行ってきた。今年度はBC_2F_1集団から目的の心白関連QTL領域(計4領域)がヘテロである個体をDNAマーカーで選抜した。単独のQTLがヘテロになった個体だけでなく、複数のQTLがヘテロになった個体も見いだした。各自殖BC_2F_2集団を展開し、DNAマーカー分析を併用しながら心白の調査を行った。今年度の栽培期間中は少雨かつ猛暑となったため、心白発現にとっては非常に厳しい環境となった。「山田錦」の心白発現が低く、BC_2F_2個体の心白発現が認められる有望な候補個体があったが、全体としてはわかりにくかった。来年度も引き続き同候補個体群を栽培して、心白発現を調査する。一方、「コシヒカリ」より明らかに晩生や早生の個体を見いだしたので、現在原因QTLの分析を進めている。 染色体断片置換系統群を作出のため、BC_3F_2集団ならびにBC_4F_1集団へ世代を進めた。平成23年度にこの集団を圃場に展開し、形質評価とDNAマーカー選抜を行っていく予定である。
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