これまでにダイズにおいて開花期に関与する4遺伝子座について、原因遺伝子が同定されている。ダイズは古倍数性の植物を起源とするために、高い相同性を持つ遺伝子が存在する。開花関連遺伝子のうちE3とE4遺伝子座は光受容体であるフィトクロムAによって支配されている。これらのフィトクロムA遺伝子に変異が生じる事で、ダイズでは早生化の表現型を示すが、相同遺伝子の機能分化や他の開花期関連遺伝子との関連についての詳細は明らかでない。今年度はこれらの開花期関連遺伝子座のうち、E1、E2、E4が分離する集団を札幌とつくばの二地点で評価を行い、そのQTLの効果を比較することで、各遺伝子座の環境応答性について解析を行った。その結果、日長の長さに依存してE4遺伝子の効果がより顕著になり、晩生型の対立遺伝子を持つ場合において開花期を遅延させるが、その効果はE1遺伝子が優性の場合により顕著であった。このことはE1遺伝子と光受容体であるE4遺伝子の間に相互作用が存在し、何らかの関連性があることを示唆している。また、国産ダイズ品種であるエンレイに対し、中国のダイズ品種Pekingを連続戻し交配によって得られたBC3F2集団に、再度戻し交配を行い、より遺伝的背景がエンレイ型に固定した集団を育成した。DNAマーカー分析によって、交配後代から開花関連遺伝子がエンレイ型からPeking型に置換した系統を選抜した。開花期関連遺伝子の日周変動、日長条件や光質等に対する応答性を遺伝子発現レベルだけでなく、表現型の変化を通じてモニタリングするために、自動撮影装置を用いた葉の調位運動を計測するシステムを構築した。次年度はこれらの育成した材料を用いて、それぞれのQTL間の遺伝子発現レベルにおける関連性を解析し、その律束段階を明らかにすることで、開花期関連遺伝子間のネットワークおよびQTL間に存在するエピスタシスの作用機構に対する知見を得る。
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