イネはグリシンベタイン(ベタイン)を合成も蓄積もしないが、イネにおいてもベタイン合成酵素であるベタインアルデヒド脱水素酵素(BADH)タンパク質は発現している。そこで、イネのペルオキシソーム局在型BADHタンパク質がアセトアルデヒドの脱水素反応に関与することに注目し、イネのペルオキシソームにおけるアセトアルデヒド脱水素酵素の生理機能の解明を目的として、以下の研究を行った。 1.様々な植物種のBADHタンパク質の作製。イネ科植物のイネ、オオムギ、ヤンソウ、トウモロコシ、ソルガム、ヒユ科植物のホウレンソウ、およびシロイヌナズナのBADH相同遺伝子をデータベースから検索し、プライマーを作製し、PCR法により単離した。それらの遺伝子をpET32aベクターにサブクローニングし、大腸菌BL21株に導入した。 2.BADH遺伝子改変イネの作出用コンストラクトの作製およびイネの形質転換。イネOsBADH1およびOsBADH2遺伝子をアンチセンス法により発現量を減少させるために、OsBADH1およびOsBADH2のタンパク質コード領域をアンチセンス方向にpCAMBIA1300ベクターに組み込んだアンチセンス用コンストラクトを作製し、イネ品種日本晴のカルスにアグロバクテリウム法により導入し、再分化させてF0植物体を得た。 3.シロイヌナズナBADH遺伝子ノックアウト株の選抜。シロイヌナズナの2つのBADH相同遺伝子ノックアウト株をデータベースより検索し、ABRCより入手した。その後ジェノタイピングおよびRT-PCR法によりBADH相同遺伝子のノックアウト株を探したが、BADH遺伝子のノックアウトされた株は得られなかった。
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