研究課題/領域番号 |
22780015
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
島崎 由美 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター水田利用研究領域, 研究員 (80414770)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パン用コムギ / 子実タンパク質含有率 / 開花期追肥 |
研究概要 |
開花後に吸収された窒素は子実に転流する際、葉を経てデンプン合成に貢献してから子実へ転流する経路から葉でのデンプン合成に貢献しないで直接子実に転流する経路に変化するという仮説を検証した。窒素追肥の時期を生育初期から登熟期間中まで細かく設定した試験によって得られたサンプルの器官別の窒素および炭素含有量を測定した。その結果、予想と異なり成熟期の地上部の窒素に占める穂の窒素の割合には追肥時期による違いは認められなかった。さらに開花前22日、開花日、開花後20日の3時期に15Nを用いて追肥を行った。その結果、追肥時期が遅くなるのに伴い、追肥10日後の15Nは葉身や稈+葉鞘といった同化器官への分配が少なく、穂への分配割合が多くなった。一方,成熟期にはいずれの追肥時期でも15Nの大部分が穂へ分配されていた。これらの結果から、仮説と同様に追肥時期が遅くなるのに伴い、追肥された窒素は葉や稈、葉鞘などの光合成器官に分配される割合が減ることが明らかになった.一方で、追肥された窒素の大部分は成熟期には穂へ分配されていた結果から、コムギでは窒素の再転流能力が高いことが推察された。 併せて、開花時の植物体の窒素栄養状態が仮説の成立に及ぼす影響について、開花期の植物体の窒素栄養状態が異なるコムギに開花期窒素追肥を行うことで、子実収量や子実タンパク質含有率に及ぼす影響を検討した。その結果、開花期の窒素蓄積量が多いほど開花期窒素追肥が子実タンパク質含有率を高める効果が小さいことが分かった。それは、開花期の窒素蓄積量が多いと茎葉から穂へ再転流する窒素量が多く、開花期窒素追肥を行わなくても子実タンパク質含有率が高くなるためであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初設定した、開花後に吸収された窒素は子実に転流する際、葉を経てデンプン合成に貢献してから子実へ転流する経路から葉でのデンプン合成に貢献しないで直接子実に転流する経路に変化するという仮説の検証について、予定通り栽培試験を行うことができ、15Nを用いた検証も併せて行えた。これまでの栽培試験の結果から、仮説の検証に際して有効なデータを収集できた。さらに仮説の成立する条件についても、圃場や施肥の異なる条件で栽培試験を行い、データを収集することができたため、おおむね順調に進行しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
仮説の検証に必要なデータ収集を行うことができたので、今後はこれまでに得られたデータの解析およびとりまとめ、補足データの収集をすることとする。とりまとめた結果については速やかに論文化し、発表することを目標とする。
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