本研究課題は、我が国の多収イネ品種の1つであるタカナリと、その祖先品種(緑の革命の立役者IR8を含む)の個葉光合成能と光合成関連形質の調査・比較・遺伝解析を通して、各形質の選抜由来を探り、多収品種の育種過程における光合成能の重要性を明確にするとともに、タカナリの光合成能の向上に寄与する遺伝変異を探索することで、今後の多収育種の方向を示すことを目的とする。 23年度は、22年度に観察された止葉の光合成速度の品種間差が、遺伝解析を行う栽培条件下でも安定して再現できるか確認実験を行った。コシヒカリ、タカナリ、統一、およびIR8を1列×3反復で栽培し、出穂期の止葉の光合成速度および関連形質を調査した。IR8は他の品種に比べ出穂期が3週間遅かったが、タカナリ、統一、IR8とともにコシヒカリよりも有意に光合成速度が高いことが再現良く観察され、その光合成速度の変異は葉身N含量とSPAD値によって精度良く説明することができた(r=0.81)。よって、光合成速度を葉身N含量やSPAD値によって個体レベルで評価できる、遺伝解析に供試できると判断した。 また、遺伝解析に向けて、22年度に作出したコシヒカリ/タカナリ、コシヒカリ/統一、コシヒカリ/IR8のF_1個体からF_2自殖種子をそれぞれ採種するとともに、ゲノムワイドに多型を示すDNAマーカーを各組み合わせ100マーカー以上得た。
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